その他
ニワトリさん、ウズラさんなどを飼育されている方へ
最近、愛玩鳥として飼育されているニワトリさんやウズラさんの診察が増えてきました。しかし、それに伴う問題も発生しています。
そこで、今回は飼育者の方に知っておいていただきたいニワトリさんたちについての④つのお話をしようと思います。
①「ニワトリ、アヒル、ウズラ、キジ、ホロホロチョウ、シチメンチョウ、ダチョウ」は家畜伝染病予防法の対象となります。
よって、これらの鳥さんを飼育する場合は、毎年、飼育状況を都道府県に報告する必要があります。
この事を知らずに飼育されている方が意外と多いですが、法律違反となります。必ず報告するようにしてください。
家畜伝染病予防法は、例えば、鳥インフルエンザなどの危険な感染症が発生した場合に、ニワトリさんなどがどこでどれくらい飼育されているかを行政が把握しておくことにより、感染の拡大を防ぐための対策をとるなど、家畜の伝染性疾病の発生の予防とまん延の防止により畜産の振興を図ることを目的とする法律です。
もし、飼育されているニワトリさんで飼育の届出がされていない子がいたりすると、そこから感染が広がってしまう恐れがあります。これは大きな問題で、例えば、家族として暮らしていたニワトリさんが高病原性鳥インフルエンザにかかってしまった場合、そのご家族だけの問題ではなく、「養鶏産業に及ぼす影響が甚大であるほか、国民への鶏肉・鶏卵の安定供給を脅かし、国際的にも、高病原性鳥インフルエンザの非清浄国として信頼を失う」おそれがあります。要するに国全体へ影響が出る可能性があるということです。
報告を行っていなかったせいで感染が拡大した場合には、飼育者に大変な責任が伴います。
こういった理由から、上記の鳥さんを飼育する場合は必ず都道府県に報告を行ってください。
②ニワトリさんなどの野外飼育は危険です。
先ほどの話と重複する部分もありますが、感染症の観点から野外での飼育はお薦めしません。野外で飼育していると必然的に野鳥さんや他の野生動物さんとの接触機会が増えてしまいます。そこから病気に感染してしまう可能性が十分に考えられるからです。
実際、先日来院されたニワトリさんは外で飼育していた結果、鶏痘という国に届出が必要な感染症にかかってしまっていました。この病気も周囲の養鶏場のニワトリさんに感染してしまうと、産卵数が減ってしまうなどの大きな被害を起こす恐れがあります。
これがもし鳥インフルエンザなどの危険な感染症だった場合は発生場所から半径3キロメートル以内の区域で鳥さんの移動が制限されることになったり、場合によっては半径10キロメートル以上で移動が制限される可能性もあります。
そうなった場合、当然、発生場所周囲の動物病院は鳥さんの診察がしばらくできなくなってしまいます。
他にも、ダニなどの寄生虫がついてしまったり、猫さんやカラスさんに襲われたりと危険が多いですので、ぜひ室内での飼育を行ってください。
当院では感染症予防の観点から、野外飼育のニワトリさんは他の患者さまと診察時間をずらしてご対応させていただいております。
ご理解のほど、お願いいたします。
③ワクチンについて
ニワトリさんの病気にはワクチンが存在しているものもあります。
しかし、これは畜産用(お肉や卵のために飼育されているニワトリさん用)であり、最小単位でも500羽分などになってしまいます。
ですので、これを飼育している1羽の子のために使うとなると、それなりの費用になってしまいます。
また、畜産用のニワトリさんは生後120日くらいまでの間に様々な種類のワクチンを10回ほど接種します。これも愛玩鳥では非現実的な状況です。
当院ではニューカッスル病の予防ワクチンのみ取り扱っていますが、これも2〜3ヶ月毎に投与を続けていかないと、効果が維持できないとされています。
愛玩鳥のワクチンでの病気予防はまだまだ難しい状況ですので、感染源との接触を防ぐためにも室内での飼育をお願いします。
④病気について
ニワトリさん、ウズラさんは繁殖関連疾患が非常に多いです。
正直、病気にならずに天寿をまっとうできる子はほんの一握りしかいないと思います。
もともと、こういった鳥さんたちは愛玩鳥としてではなく、卵やお肉のために飼育されてきました。
そのために長い時間をかけて人間が作り上げた生き物なのです。
実際にニワトリさんの原種と言われる赤色野鶏や野生のウズラさん、キジさんなどは多くても1年間で20個前後しか産卵しません。それを人間が作り変えたのが今のニワトリさんたちです。
極端な考え方をすれば、この子たちは卵やお肉をたくさん作るために、自分の命を削るようにできています。当然、体には無理な負担がかかりますし、病気のリスクも高いです。もちろん、治療しようと思えば費用もかかります。
悲しいですが、ニワトリさんやウズラさんは厳しい現実と向き合わなくてはならなくなる可能性が高い動物だと思います。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
ニワトリさんたちを愛玩鳥としてお迎えしようと考えている方は、上記のことを知った上でご検討いただければと存じます。